債務整理の弁護士費用は1社あたりか総額かで変わる
債務整理の費用を調べると「1社あたり11,000円〜」のような書き方に行き当たります。この数字だけでは総額が出ません。費用は項目と債権者の数で決まります。
費用は4つに分かれる
事務所に払うものと、裁判所に納めるものは別です。事務所に払うぶんも1つではありません。
| 名前 | 何に対して | 決まり方 |
|---|---|---|
| 基本報酬・着手金 | 手続きを引き受けること | 1社あたりのことが多い |
| 減額報酬 | 減った金額に対して | 減額分の割合。取らない事務所もある |
| 過払い報酬 | 戻ってきた過払い金に対して | 回収額の割合 |
| 実費 | 郵便・交通費・戸籍などの取り寄せ | 実際にかかった分 |
割合で決まるものは、金額が確定するまで総額が出ません。先に払う分と、後から精算する分が混ざるので、見積もりを聞くときは分けて聞くことになります。
1社あたりか総額かで、桁が変わる
任意整理は債権者ごとに交渉する手続きです。だから基本報酬は1社あたりで示されることが多く、借入先が5社なら5倍になります。手続きそのものの向き不向きは任意整理を考えるときに見るところにまとめました。
大阪のアース司法書士事務所は、任意整理の基本報酬を「取引中 1社あたり 11,000円〜(税込)」「完済分 1社あたり 0円」と分けています。完済している取引先は過払い金の請求になるので、基本報酬が別建てになっています。
「◯円〜」の「〜」も見落とせません。 下限しか示していない場合、上がどこまでか分かりません。当サイトが料金の金額を載せていないのはこのためで、理由のほうを表に書いています。
減額報酬を取るかどうかで総額が変わる
減額報酬は、交渉で減った額に対してかかる報酬です。アース司法書士事務所は「当事務所では頂戴いたしません」と明記していますが、取る事務所もあります。確認した内容は記事末尾の表にまとめました。
減額報酬があると、減れば減るほど払う額も増えます。比べるときは基本報酬だけを並べても意味がなく、減額報酬の有無まで揃えて見ることになります。
弁護士費用のうち、報酬金には上限が決まっている
ここが調べても出てきにくいところです。日本弁護士連合会は2011年2月の臨時総会で「債務整理事件処理の規律を定める規程」を定めていて、報酬金に上限があります。2011年4月1日以降に受任した事件が対象です。
解決報酬金 1社あたり2万円以下が原則。商工ローンは5万円以下。
減額報酬金 減額分の10%以下。
過払金の報酬にも上限があります。
過払金報酬金 訴訟によらない場合回収額の20%以下。 訴訟による場合回収額の25%以下。
いずれも消費税は別です。同じページに、任意整理の処理をしている間の管理手数料や引き直し計算の計算手数料といった名目で手数料を取ることは禁止されている、とも書かれています。
つまり、見積もりに「管理手数料」のような費目が並んでいたら、それ自体を確かめる理由になります。
ただし着手金には上限が無く、破産と個人再生は対象外
同じページにこう書かれています。
【非事業者等任意整理事件の着手金の規制】⇒上限規制はなし
そして規制の対象も限られています。
※破産事件、民事再生事件などは報酬規制の対象外です。
上限があるのは、任意整理の報酬金だけです。 着手金は自由に決められますし、自己破産と個人再生の費用にはこの規程が及びません。「上限があるから安心」とは読めない、というのがここの結論になります。
実際に公開されている額を並べる
料金表を公開している窓口を2026年8月23日に開いて、任意整理の1社あたりの額を書き出しました。どれも税込です。表示のしかたが揃っていないので、額そのものより費目の組み方を見てください。
| 窓口 | 1社あたりの基本の額 | 減額報酬 |
|---|---|---|
| 法テラス(立替の目安) | 33,000円(着手金)+実費10,000円 | 原則なし |
| 司法書士法人黒川事務所 | 33,000円(定額報酬) | 0円 |
| 松谷司法書士事務所 | 1社目33,000円/2社目以降29,000円 | 記載なし |
| ひまわり法律事務所 | 33,000円+報酬金22,000円 | 減額分の11%(税込) |
| 弁護士法人北千住パブリック法律事務所 | 22,000円(最低55,000円) | 報酬金の中に含む |
1社あたり33,000円が、法テラスも含めて複数の窓口で一致します。 ここが基準点になります。
そのうえで、同じ33,000円でも中身が違います。黒川事務所は成功報酬も減額報酬も0円で返済代行が1振込1,100円、ひまわり法律事務所は33,000円に報酬金22,000円と減額分の11%が乗ります。表の左側だけを見て安い順に並べると、順番が入れ替わります。
北千住パブリック法律事務所の「最低55,000円」は、依頼する債権者が1つでも55,000円かかるという意味です。債権者の数が少ないときは、この下限が効いてきます。
記事末尾の表に挙げたシン・イストワール法律事務所は、任意整理の着手金を1社につき58,300円としています。減額報酬は減額分の11%です(税込。2026年9月2日確認)。基準点の33,000円より高い側です。費目の組み方はひまわり法律事務所と同じ型(着手金+減額報酬)です。初回相談料は無料と書かれていますが、それは相談の話で、依頼した場合の額は上のとおりです。
「費用0円」をうたう表示に効く条文
料金表を出さずに「相談無料」「費用0円」だけを大きく書く広告があります。これに当たるのが景品表示法5条2号です。
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
見られるのは「一般消費者に誤認される表示」かどうかで、書いてあるかどうかではありません。相談が無料であることと、依頼したあとの費用が0円であることは別です。その2つが分かれて読める形になっているかが問題になります。
ただし、根拠の提出を求める仕組みは価格には働きません。 7条2項は5条1号(品質や内容の優良誤認)だけを対象にしていて、2号の価格や取引条件は入っていません。
減額の実績・解決件数
- 景品表示法5条1号
- 7条2項で資料の提出を求められる
費用・相談料
- 景品表示法5条2号
- この条文では資料の提出を求められない
違うのは号。根拠の提出を求められるのは1号(品質・内容)だけで、価格その他の取引条件は入らない
だから費用については、条文ではなくその事務所の料金ページを開いて費目を数えることになります。上の表を作るのにやったのはそれだけです。
なお弁護士に頼む場合の報酬金には、日弁連の規程で上限があります。これは景品表示法とは別の話です。着手金のほうには上限がありません。中身は上の節にまとめました。
裁判所に納める費用は事務所の報酬と別
自己破産と個人再生は裁判所の手続きなので、事務所の報酬とは別に予納金がかかります。破産法22条1項がこう定めています。
破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
民事再生法24条1項も同じ形です。
再生手続開始の申立てをするときは、申立人は、再生手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
どちらも「裁判所の定める金額」で、法律には数字がありません。事案によって変わるので、申し立てる裁判所に確かめる話になります。任意整理は裁判所を通さないので、この予納金がかかりません。
自己破産の予納金は、管財人を付けない同時廃止か管財事件かで額が変わります。その分かれ目も破産法216条に書かれているので、自己破産の費用は同時廃止か管財かで変わるに分けてまとめました。
手続きごとの違いは債務整理の種類は決める人で分かれるにまとめました。
司法書士に頼む場合、代理権を超えると費目が変わる
司法書士のうち認定を受けた人が任意整理を代理できるのは1件140万円までです。これを超える借入先は代理ではなく、裁判所に提出する書類の作成になります。
同じ事務所でも、代理と書類作成では費用の名前も額も変わります。アース司法書士事務所は「裁判書類作成業務および付帯業務費用」を別に定めています。
金額の線がどの条文から出てくるかは司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。相談の前に借入先ごとの残高を出しておくと、どちらになるかが先に分かります。
払えないときの立替えには法律の根拠がある
費用が払えないから相談できない、という順序にはなっていません。総合法律支援法30条1項2号が、日本司法支援センター(法テラス)の業務として立替えを挙げています。
代理人に支払うべき報酬及びその代理人が行う事務の処理に必要な実費の立替えをすること。
誰が対象かも、同じ号の柱書に書かれています。
民事裁判等手続又は行政不服申立手続において自己の権利を実現するための準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない国民若しくは我が国に住所を有し適法に在留する者(以下「国民等」という。)又はその支払により生活に著しい支障を生ずる国民等を援助する次に掲げる業務
条件は2つ並んでいます。費用を払う資力がないことと、払うと生活に著しい支障が生じることです。**払えないほど困っている人だけが対象、というわけではありません。**払えはするが生活が立ち行かなくなる場合も入ります。
立替えなので、後から返します。返し方は一括ではありません。法テラス千葉が、利用者向けの案内でこう書いています。
法テラスが立替をした弁護士・司法書士費用等は、ご登録の口座からの引落により、毎月分割で返済していただきます。
口座からの引落しで、毎月の分割です。だから「まとまった額を用意できないと頼めない」という順序にはなりません。引用の中に司法書士費用等が入っているので、上のハの号で立て替えたぶんも同じ返し方になります。
返せない事情があるときのために、免除の仕組みも置かれています。
令和8年4月1日から、全国でインターネットによる民事法律扶助の償還免除申請サービスを開始いたしました!
償還免除の申請という手続きがあり、2026年4月から全国でインターネットからも出せます。どういう場合に認められるかは条文ではなく法テラスの運用なので、資力の基準とあわせて申し込む前に確かめることになります。無料の法律相談も同じ条文の枠内にあります。
なお立替えの対象は「代理人に支払うべき報酬」と「実費」で、裁判所に納める予納金とは別の枠です。ここも申し込む前に確かめる箇所になります。
書類を作ってもらう場合も、同じ号に入っている
上で引いたのは同じ号のイで、代理人に払う報酬の立替えです。代理ではなく書類作成を頼む場合は、ここに当てはまりません。自己破産や個人再生の申立てで認定司法書士に頼むときは、こちらの形になります。そのための号が別に置かれています。総合法律支援法30条1項2号ハです。
弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)その他の法律により依頼を受けて裁判所に提出する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)を作成することを業とすることができる者に対し民事裁判等手続(特定援助対象者を援助する場合にあっては、イ(1)に定める手続)に必要な書類又は電磁的記録の作成を依頼して支払うべき報酬及びその作成に必要な実費の立替えをすること。
長いので分けます。裁判所に提出する書類を作ることを業とできる者に頼んで払う報酬と、その実費が対象です。認定司法書士(法務大臣の認定を受けた司法書士)に頼む場合も入ります。代理できるのは1社あたり140万円までですが、その線はこの号には関係しません。書類作成の報酬として立替えの対象になります。
つまり代理を頼むか書類作成を頼むかで、使える号が変わるだけです。イだけを読むと、書類作成では立替えが使えないように見えます。どちらの号も同じ「資力がない」「支払により生活に著しい支障を生ずる」の枠の中にあります。
代理と書類作成で費目そのものが変わる話は、この記事の後半に置いてあります。認定司法書士が代理できるのは1社あたり140万円までなので、その線を超えると費目が変わります。
受任通知を出した後の入金は返済ではない
費用の話で混ざりやすいのがここです。依頼すると、事務所によっては毎月の入金を求められることがあります。これは債権者への返済ではなく、費用の分割払いと、和解後の返済に備えた積み立てにあたります。
取立てが止まるのは、依頼を受けた側が出す受任通知が届いた時点で、根拠は貸金業法にあります。止まっている間の入金が何に充てられているのかは、債権者ごとの内訳と合わせて聞いておくことになります。受任通知が届くと取立てが止まるにまとめました。
見積もりを聞くときに確かめること
- 基本報酬は1社あたりか、総額か
- 減額報酬はあるか。あるなら何に対して何パーセントか
- 過払い金が戻った場合の報酬は、訴訟の有無で変わるか
- 実費は何が含まれるか。交通費は別か
- 裁判所に納める予納金の見込みはいくらか
- 代理権を超える借入先がある場合、費目と額はどうなるか
- 分割払いはできるか
1と2を聞かずに「安いほう」を選ぶと、債権者の数と減額幅で逆転します。
相談の前に用意しておくもの
借入先ごとの残高が分からないと、1社あたりの費用を掛け算できません。相談の前に取引履歴を取り寄せるにまとめました。
手続きごとの内訳は自己破産の費用は予納金で決まると個人再生の費用は、事務所に払う分と裁判所に納める分に分かれるにあります。
まとめ
- 事務所に払う費用は基本報酬・減額報酬・過払い報酬・実費に分かれる
- 任意整理の基本報酬は1社あたりのことが多く、借入先の数で総額が変わる
- 減額報酬があると、減った額が大きいほど払う額も増える
- 自己破産と個人再生は裁判所への予納金が別にかかる(破産法22条・民事再生法24条)
- 予納金の額は法律に書かれておらず、裁判所が定める
- 払えない場合の立替えは総合法律支援法30条に根拠がある
なお、依頼したあとで事務所を変えたくなった場合、着手金は改めて掛かり直します。返る額の考え方は債務整理の事務所は途中で変更できるにまとめました。