官報の自己破産は90日で閲覧できなくなる
自己破産をすると官報に載ります。そこまでは調べればすぐ出てきます。そのあとどうなるかは、あまり書かれていません。このページは、載ったものがいつまで見られるのかを条文で確認します。
どの手続きで載るのかは債務整理で官報に載るのはどの手続きかにあります。任意整理と特定調停(簡易裁判所で話し合って決める手続き)には公告の規定がありません。
官報の発行はインターネットが本体になった
2023年に官報の発行に関する法律ができ、2025年4月1日から施行されています。それまで官報は紙が正式なもので、インターネット版は事実上の便宜でした。いまは逆です。
同法5条2項は、官報の発行を「自動公衆送信を利用して公衆が閲覧することができる状態に置く措置」をとることにより行う、と定めています。ネットに載せることが発行そのものになりました。
そのうえで、いつまで載せておくかを8条1項が決めています。
内閣総理大臣は、第五条第二項の措置をとったときは、当該措置をとった時から起算して同項の閲覧又は同条第五項前段の複写をするために必要かつ適当な期間として内閣府令で定める期間(以下「閲覧期間」という。)が経過するまでの間、継続して当該措置をとるものとする。
日数は法律に書いてありません。「内閣府令で定める期間」です。
90日という数字は府令にある
官報の発行に関する内閣府令15条がその期間です。
法第八条第一項の閲覧期間は、法第五条第二項の措置をとった日から起算して九十日を経過した日の午前八時三十分までとする。
90日と、時刻まで決まっています。起算は掲載された日で、その日から数えて90日を過ぎた日の午前8時30分まで。
破産の公告そのものは、掲載の翌日に効力が出ます。破産法10条2項です。
公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。
効力の起算と閲覧の期限は別の話です。混ぜて読まないでください。
90日を過ぎても残るものがある
期間が過ぎたら全部消えるわけではありません。同法8条4項に続きがあります。
内閣総理大臣は、第五条第二項の措置に係る電磁的官報記録のうち法令その他の内閣府令で定める事項については、閲覧期間又は追加措置期間の経過後においても引き続いて、内閣府令で定めるところにより、当該事項に係る情報を同項の自動公衆送信を利用して公衆が閲覧することができる状態に置く措置をとるものとする。
法令などは期間を過ぎても見られる状態に置かれます。では、その「内閣府令で定める事項」に破産の公告が入るのか。ここが読者にとって一番の関心事です。
個人の氏名と住所は、名指しで外れている
府令18条は、8条4項の対象を決める条文です。書き方が独特で、**「次に掲げる事項のいずれにも該当しないもの」**が対象になります。つまり列挙されたものは対象から外れます。
その1号がこれです。
個人の氏名及び住所、生年月日その他個人に関する情報が含まれる事項であって、当該事項を法第五条第二項の自動公衆送信を利用して公衆が無期限に閲覧することができる状態に置くことにより当該個人のプライバシーの確保に支障が生ずるおそれがあると認められるもの
理由としてプライバシーが名指しされています。個人の破産の公告には氏名と住所が載るので、この形にあたると認められれば、90日を過ぎたあとに引き続き閲覧できる状態へは置かれないことになります。
条文には「公益性が特に高いと認められる事項を除く」という括弧書きもあります。どの公告がそこに入るかは、条文からは決められません。そこまでは書けないので、条文がこう組み立てられているところまでにします。
公文書館へ移したあとにも条件が付く
閲覧期間が過ぎた官報は、公文書館へ移されます。法13条1項です。移すときの扱いを、府令25条2項がこう定めています。
内閣総理大臣は、法第十三条第一項の規定による移管をする場合においては、第十八条各号の支障が生じないようにするため、当該移管に係る官報に係る電磁的官報記録について、電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により不特定多数の者がその提供を受けることができる状態に置かないこととする旨の条件を付するものとする。
移した先でも、ネットで誰でも見られる状態には置かない条件を付ける。しかも理由として、さきほどの18条各号を引いています。保存はするが、公開のしかたは分けるという組み立てです。
なお、有料の検索サービスで過去の官報を調べる方法は別に用意されています。「見られなくなる」のは、無料で誰でも開ける状態のことです。完全に消える、とは書けません。
期間の整理
公告の効力が生じる
- 掲載の翌日
無料の閲覧ができる
- 掲載日から90日を過ぎた日の午前8時30分まで
効力は翌日から続くが、無料で読めるのは90日で終わる
信用情報に登録される期間はこれとは別で、はるかに長くなります。そちらは債務整理のブラックリストは何年で消えるかにまとめました。官報が見られなくなることと、信用情報から消えることは連動しません。
官報を写した別のサイトは、別の問題になる
官報に載った情報を集めて一覧にしたサイトが現れることがあります。官報の側で90日という期限が決まっていても、写された先はその期限の外です。
ここは官報の制度ではなく、個人情報保護法の話になります。写した側が個人情報取扱事業者にあたるなら、本人には請求できることがあります。同法35条5項です。
本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データを当該個人情報取扱事業者が利用する必要がなくなった場合、当該本人が識別される保有個人データに係る第二十六条第一項本文に規定する事態が生じた場合その他当該本人が識別される保有個人データの取扱いにより当該本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合には、当該保有個人データの利用停止等又は第三者への提供の停止を請求することができる。
読みどころは「その他当該本人が識別される保有個人データの取扱いにより当該本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合」です。違反があった場合に限られていません。権利や正当な利益が害されるおそれがあれば請求できる、という書き方になっています。
相手が応じない場合の相談先は、個人情報保護委員会です。どのサイトが違法かをここで断定することはできません。できるのは、請求する道が法律に用意されていることを示すところまでです。
まとめ
- 2025年4月1日から、官報の発行はインターネットへの掲載そのものになった
- 無料で閲覧できる期間は90日(府令15条。午前8時30分まで)
- 期間を過ぎても残る対象から、個人の氏名と住所を含むものは外れている
- 外す理由として、府令はプライバシーの確保を名指ししている
- 公文書館へ移したあとも、ネットで不特定多数が見られる状態には置かない条件が付く
- 有料の検索サービスは別にあるので、完全に消えるとは書けない
- 官報を写した別のサイトは、個人情報保護法35条5項で請求する道がある
破産の公告が一生ネットに残るという前提は、いまの条文とは合いません。
手続きそのものを人に知られるかどうかは、官報より近いところで決まります。勤務先に知られる経路は債務整理が会社にバレるのは、差押命令が届いたとき、家族については自己破産が家族にバレるのは通知ではなく保証人からにあります。