債務整理で官報に載るのはどの手続きか
債務整理で気になることの1つが、手続きが人に知られるかどうかです。官報については条文に書かれているので、どの手続きで載るのかは先に分かります。
公告は官報でする、と法律に書いてある
破産法10条1項がこう定めています。
この法律の規定による公告は、官報に掲載してする。
民事再生法10条1項も同じ文言です。つまり両方の法律で、公告と書かれている場面は官報に載ります。
効力が生じる時点も決まっています。民事再生法10条2項です。
公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。
開始の決定は必ず公告される
破産法32条1項の本文がこれです。
裁判所は、破産手続開始の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。
「しなければならない」なので、裁判所に選択の余地がありません。公告する事項も各号に並んでいて、開始決定の主文、破産管財人の氏名または名称、債権届出の期間または期日などです。
民事再生法35条1項も同じ形で、再生手続開始の決定をしたときに公告すると定めています。社債管理者等がないときに3号を省ける、というただし書きが付いています。
免責の決定には、公告しろと書かれていない
ここが分かれ目です。**「免責が官報に載る」と説明されますが、返済の義務が無くなる免責許可の決定を公告しろという条文はありません。**252条を読むと、書かれているのは送達のほうです。
裁判所は、免責許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び破産管財人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
末尾の「第十条第三項本文の規定は、適用しない」が効いています。10条3項本文はこう定めています。
この法律の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができる。
つまり送達は公告で代えられるのが原則で、252条3項はそのうち破産者と破産管財人に渡す裁判書についてだけ、代替を認めていません。債権者へ送る「決定の主文を記載した書面」の側は、除外に入っていません。
免責の決定が官報に載るのは、公告の義務があるからではなく、債権者への送達を公告で代えているからです。
個人再生の認可決定も同じ形です。174条4項は書面の送達を定めていますが、公告しろとは書かれていません。民事再生法10条3項にも同じ代替の規定があります。
手続きの途中でも公告される場面がある
個人再生には、開始と認可のあいだにもう1つあります。小規模個人再生では230条4項が、再生計画案を決議に付する決定についてその旨を公告するよう定めています。
給与所得者等再生のほうは決議をしないので、代わりに240条2項が、意見を聴く旨の決定について公告を求めています。
途中で終わる場合の規定もあります。破産法216条3項は、開始と同時に手続きを廃止するときに、両方の主文をまとめて公告するとしています。217条4項は開始後に廃止するときの公告です。
同じ「官報に載る」でも、どの条文で載るのかは場面ごとに違います。
任意整理と特定調停には、この規定が無い
任意整理は裁判所を通しません。債権者と直接話をつける手続きなので、裁判所の公告という場面がそもそも出てきません。
特定調停は簡易裁判所で話し合って決める裁判所の手続きですが、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律には、官報や公告についての条文がありません。全文を通して確認しています。
手続き官報の公告
- 任意整理無い裁判所を通さない
- 特定調停無い特定調停法に公告の規定が無い
- 個人再生開始の決定などで公告民事再生法35条1項・10条1項
- 自己破産開始の決定などで公告破産法32条1項・10条1項
4つの手続きの違いは債務整理の種類は決める人で分かれるにまとめました。
官報とは別に、通知が行く相手がいる
見落とされやすいのがこちらです。破産法32条3項がこう定めています。
次に掲げる者には、前二項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。
各号に挙げられているのは、破産管財人、破産者、知れている破産債権者、知れている財産所持者等、保全管理人、そして労働組合等です。
つまり債権者には個別に通知が行きます。 官報を誰が見るかという話とは別に、借入先には必ず伝わります。勤務先から借りている場合は、勤務先が債権者になります。
民事再生法35条3項も同じ形で、再生債務者と知れている再生債権者への通知を定めています。
保証人には別の道筋で伝わる
保証人を立てている借入があると、官報とは関係のないところで話が動きます。破産法253条2項がこう定めています。
免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
免責を受けても、債権者が保証人に対して持っている権利はそのまま残ります。債権者は保証人に請求できるので、保証人には請求という形で伝わります。親族に保証人を頼んでいる場合は、官報より先にここを確かめることになります。
なぜ官報に載せるのか
官報への掲載は、罰として置かれているものではありません。条文を読むと、知らせる手段として組み込まれていることが分かります。
破産法10条3項です。
この法律の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができる。ただし、この法律の規定により公告及び送達をしなければならない場合は、この限りでない。
破産手続には、名前も住所も分からない債権者が出てきます。その全員に書類を届けるのは無理なので、官報への掲載で送達の代わりにできる、と定めています。
効果もはっきり書かれています。同条4項です。
この法律の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなす。
「みなす」なので、実際に読んだかどうかは問いません。掲載の翌日から、関係人は知らされたものとして扱われます。異議を述べる期間などが、ここから動き始めます。
民事再生法10条3項・4項も同じ文言です。
官報は誰でも読める
官報の発行については、2023年に官報の発行に関する法律ができました。2条がこれです。
官報の発行は、この法律の定めるところにより、内閣総理大臣が行う。
発行の方法も5条2項に書かれていて、記録したファイルを電気通信回線に接続し、自動公衆送信を利用して公衆が閲覧できる状態に置く措置をとることにより行う、という内容です。インターネットで読める形が正式な官報になっています。
掲載された事実は、読もうと思えば誰でも読める状態に置かれます。
いっぽう、裁判所が個別に通知する相手は条文で限られていて、家族も勤務先も入っていません。誰に伝わるかは自己破産が家族に知られるのは通知ではなく保証人からに経路ごとに分けました。
一方で、載ったことが自動的に誰かに伝わる仕組みはありません。検索して探す人がいるかどうかは、条文の話ではなくなります。ここは「載る」「載らない」だけを事実として押さえて、そこから先の見込みは事務所に相談するときに聞くほうが確かです。
信用情報とは別の話
官報と信用情報は違うものです。信用情報はCICなどの信用情報機関が持っていて、保有期間も機関ごとに公表されています。
どれだけ残るかは債務整理のブラックリストは信用情報にどれだけ残るかにまとめました。
相談の前に決めておくこと
- 借入先ごとの残高を出す
- 勤務先や親族からの借入があるか確かめる
- 裁判所を通す手続きを選ぶ可能性があるかを考える
2は官報より先に効きます。債権者への通知は条文で決まっているので、借入先に含まれていれば必ず伝わります。
準備するものは相談の前に取引履歴を取り寄せるにまとめました。
迷ったときの窓口
手続きの選び方で迷う段階では、公的な窓口も使えます。法テラス(日本司法支援センター)は、収入等の条件を満たす場合に無料の法律相談を扱っています。契約や請求でもめている場合は、消費者ホットライン 188 が窓口になります。
まとめ
- 破産法10条1項と民事再生法10条1項が、公告は官報に掲載してすると定めている
- 開始の決定は破産法32条1項・民事再生法35条1項で公告される
- 任意整理は裁判所を通さず、特定調停法には公告の条文が無い
- 官報とは別に、知れている債権者へは個別に通知が行く
- 官報は誰でも読めるが、載ったことが自動的に伝わる仕組みはない
載ったものがいつまで見られるかは、官報の側の法律で決まっています。無料で閲覧できる期間と、期間を過ぎたあとの扱いは官報の自己破産は90日で閲覧できなくなるにまとめました。