過払い金の仕組み|上限金利は元本で3段階
払いすぎた利息が戻ることがある、という話の出どころは条文です。
利息制限法が上限を決めていて、超えた部分を無効にしているところから始まります。
元本とは、借りた金額そのもの
元本は、借りた金額そのものを指します。利息や遅延損害金とは別のものです。利息制限法が上限を分けるときに使うのも、この元本の額です。
返しているのに残高が減らない、という相談があります。理由は民法489条1項にあります。
債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
**順番は費用・利息・元本です。**払った額が全部を消せないときは、まず費用に、次に利息に充てられます。元本に届くのは残りだけです。
月々の返済額が利息とほぼ同じなら、元本はほとんど減りません。残高が動かないのは、返していないからではなく、この順序のためです。
上限は元本の額で変わる
利息制限法1条です。
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
各号が元本の額で分かれています。
元本の額利息の上限
- 10万円未満年20%
- 10万円以上100万円未満年18%
- 100万円以上年15%
条文では「年二割」「年一割八分」「年一割五分」と書かれています。
借りた額が大きいほど上限が下がる組み立てです。100万円を境に15%まで下がります。
罰があるのは別の法律のほう
利息制限法が定めているのは無効であって、罰ではありません。罰は出資法の側にあります。同法5条2項です。
前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
業として貸す相手には年20%の線が引かれていて、超えると刑事罰です。1項は業でない場合で、そちらは年109.5%が線になります。
2つの法律で線の位置が違います。
| 元本の額 | 利息制限法(無効) | 出資法(刑事罰) |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 20% | 20% |
| 10万〜100万円 | 18% | 20% |
| 100万円以上 | 15% | 20% |
差は順に、なし・2%・5%です。
この差の帯は今も残っています。グレーゾーン金利は無くなったと言われますが、無くなったのは出資法の上限が29.2%だった時代の広い帯です。元本の額によっては、契約としては無効だが刑事罰は無い、という範囲がまだあります。
払いすぎたかどうかを見るときに使うのは利息制限法のほうです。刑事罰の有無とは別に、超えた部分は無効として計算されます。
無効になるのは超えた部分だけ
条文は「その超過部分について、無効とする」と書いています。契約そのものが無効になるのではありません。
上限までの利息は有効なので、そこは払う必要があります。無効なのは上限を超えて払った分で、そこが払いすぎになります。
名前を変えても利息として数える
手数料や調査料という名目にすれば逃げられる、という話にはなりません。3条がそこを塞いでいます。
前二条の規定の適用については、金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなす。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。
名義を問わず利息とみなすと書かれています。ただし書きで、契約の締結と弁済にかかる費用だけが外れます。
遅れたときの上限も決まっている
返済が遅れたときの損害金にも上限があります。4条1項です。
金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
1条の利率の1.46倍が上限です。元本100万円以上なら年15%の1.46倍になります。2項は、違約金も賠償額の予定とみなすと定めています。名目を変えても同じ扱いになるところは3条と同じ組み立てです。
同じ相手から借り増した場合
上限は元本の額で変わるので、借り増すと段が動きます。5条1号です。
同じ債権者から重ねて借りた場合の利息については、既に負担している債務の残元本と、新しく借りた元本の合計額を1条の元本の額とみなす、と定められています。
つまり90万円を借りていて、さらに20万円を借りると合計110万円になり、上限は年15%の側に移ります。1件ずつ別に数えるわけではありません。
戻る根拠は民法にある
払いすぎた分がなぜ戻るのかは、利息制限法には書かれていません。民法703条の不当利得です。
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
超過部分は無効なので、受け取る法律上の原因がありません。だから返す義務が生じます。
704条には、事情を知っていた場合の定めがあります。
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
利息を付けて返すことになる場合があります。どちらにあたるかは個別の判断で、こちらで決められるものではありません。
時効がある
いつまでも請求できるわけではありません。民法166条1項です。
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
各号は、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年です。
取引が終わってから時間が経っているほど、確かめる意味があります。自分の取引がいつ終わったかは、信用情報の開示でも分かります。
業者が残っているかも効く
条文の上で請求できても、相手に払う資力がなければ実際には戻りません。返ってくる額は業者の状況で変わります。
「必ず戻る」と書けないのはこのためです。時効と資力の2つが、条文とは別のところで効きます。
借金そのものの時効も同じ民法166条から始まります。期間は借金の時効は何年で完成するかにまとめました。
引き直し計算で何をするのか
取引履歴が手に入ったら、上限を超えて払った分を計算し直します。これが引き直し計算と呼ばれるものです。
やっていることは単純で、契約に書かれた利率ではなく、利息制限法1条の上限で計算し直すだけです。超えて払った分は元本に充てられ、元本が減ったぶん次の利息も減ります。
これを取引の初めから順にやり直すと、途中で元本が0になることがあります。そこから先に払った分が払いすぎになります。
元本の額が動くと上限の段も動くので、5条の合算の規定がここで効きます。借り増しの記録が抜けていると結果が変わるため、履歴は取引の初めからそろえることになります。
利息計算のシミュレーションを載せているページを見かけますが、そこに入れる数字がそろっていなければ、出てくる額も変わります。必要なのは借入と返済の日付・金額を取引の初めから並べたもので、残高と利率だけでは引き直しになりません。だから先に取引履歴を取り寄せる順番になります。
確かめる順番
- どこから、いつからいつまで借りていたかを書き出す
- 契約書や明細が残っていれば集める
- 残っていなければ、業者に取引履歴の開示を求める
- 上限を超えていた期間があるか計算する
3までは自分でできます。4は引き直し計算と呼ばれ、弁護士や司法書士に頼むこともできます。
司法書士に頼めるかどうかは1件140万円の線で決まります。司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
いま返済中の場合
返済が続いている場合は、払いすぎの計算と借金の整理が同時に進みます。どの手続きを選ぶかで、その後の扱いが変わります。
債務整理の種類は4つで決める人が違う、相談の前に用意するものは相談の前に用意するものにまとめました。
計算しても戻らない場合
引き直しても払いすぎが出ないことはあります。上限の中で借りていた場合や、借りた期間が短い場合です。その場合は、残った債務をどう整理するかの話になります。
計算そのものは、払いすぎがあるかどうかを確かめる工程です。**出なかったこと自体は損ではありません。**残高が正確に分かるので、どの手続きを選べるかがそこで決まります。
いつまで請求できるかは、民法166条1項の消滅時効で決まります。起点が条文に書かれていないという厄介な点があるので、過払い金の時効は起点が条文に書かれていないに分けてまとめました。
引き直して差が出たら、返還を求める相手がいる
3段階の上限を超えていた分は、計算し直せば出てきます。求める先は貸した側なので、そこから先は交渉になります。
司法書士が代理できるのは1社あたり140万円までで、認定を受けた司法書士に限られます。大阪のアース司法書士事務所は、事務所紹介のページに代表者の認定番号(第612074号)と大阪司法書士会の登録番号を載せています。
まとめ
- 利息制限法1条は元本の額で上限を3段階に分けている
- 無効になるのは上限を超えた部分だけで、契約全体ではない
- 手数料や調査料という名目でも、利息とみなされる
- 戻る根拠は民法703条の不当利得。事情を知っていた場合は704条で利息が付く
- 民法166条1項の時効がある
- 条文の上で請求できても、業者の資力によって実際に戻る額は変わる
貸せる額のほうにも条文の線があります。総量規制は誰にかかっているのかにまとめました。
なお、上限を超えた部分だけが無効になるのは利息制限法の作りです。年109.5%を超えると貸金業法42条1項で契約そのものが無効になり、金利には出資法5条の罰もあります。闇金は司法書士に頼めるか|無登録営業と契約の無効にまとめました。