債権回収会社から請求が来たとき
借りた覚えのない会社から請求書が届くことがあります。多くは、もとの貸金業者から債権を買い取った会社です。
この会社が何者かは、条文で範囲が決まっています。
許可を受けた株式会社しか営めない
債権管理回収業に関する特別措置法3条です。
債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない。
株式会社であること、法務大臣の許可を受けていることの2つが要ります。個人や、株式会社以外の形の団体は、この業務を営めません。
許可の基準にも条件があります。5条の1号です。
一資本金の額が五億円以上の株式会社でない者
資本金5億円以上でなければ許可されません。小さな会社や個人名で「債権回収」を名乗る請求は、この条件と合いません。
そもそもこの法律は、弁護士法の特例として置かれています。本来は弁護士でなければ扱えない業務を、許可制で開いたものです。弁護士法の線の引き方は司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにあります。
名乗らせることができる
17条2項に、相手方から求められたときの義務があります。
債権回収会社の業務に従事する者は、その業務を行うに当たり、相手方の請求があったときは、当該債権回収会社の商号、自己の氏名その他法務省令で定める事項を、その相手方に明らかにしなければならない。
聞けば答える義務がある、という書き方です。電話で名乗らない、担当者名を言わない、という対応は条文と合いません。
聞いた商号は、許可を受けた会社の一覧と突き合わせられます。一覧は法務省が公表しています。許可番号と商号が一致しなければ、そこで止まります。
威迫や、平穏を害する言動は禁じられている
17条1項です。
債権回収会社の業務に従事する者は、その業務を行うに当たり、人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。
18条には暴力団員等を業務に従事させてはならないという規定も置かれています。
もとの貸金業者に掛かっていた取立ての規制も、譲り受けた側に引き継がれます。貸金業法24条が、譲受人について取立て行為の規制などを準用すると定めているためです。依頼を受けた側が出す通知で取立てが止まります。規制の中身は受任通知が届くと取立てが止まるにまとめました。
家に来ることはあるのか
訪問そのものを禁じる条文は、この法律にありません。 17条1項が禁じているのは、威迫と、私生活や業務の平穏を害する言動で困惑させることです。時間帯や回数の線は、譲受人に準用される貸金業法24条のほうにあります。
だから「来るかどうか」ではなく「どう来たか」で分かれます。不適当な時間帯に繰り返し来る、近所に聞こえるように用件を告げる。そうした行為が規制に当たります。
そして、依頼した専門家が受任通知を出せば取立ては止まります。訪問も、その取立てに含まれます。手順は受任通知が届くと取立てが止まるにまとめました。
無視し続けるとどうなるか
連絡を取らないでいると、請求が止まるわけではありません。債権回収会社は裁判所に訴えを起こすことができ、判決が確定すれば強制執行に進めます。その先で起きるのが給与や預金の差押えです。
この段階に入ると、選べる手続きが減ります。差押えを受けてから相談するより、通知が届いた時点のほうが取れる道は多くなります。時効が完成している可能性がある場合も、放っておくのではなく援用が要ります。数え方は借金の時効は、待っている間に何度でも振り出しに戻るにあります。
払う前に確かめること
いちばん気をつけるのは、その場で一部でも払わないことです。借金の時効は、債務を承認すると更新されます。少額でも払うと、承認したことになる場合があります。
時効が完成しているかどうかは、最後に返済した日から数えます。数え方は借金の時効は何年で完成するかにまとめました。
古い借金ほど、請求が来た時点で時効が完成している可能性があります。完成しているなら、援用の手続きが要ります。払ってしまうとその道が消えます。
取引履歴は請求できる
いくら借りて、いくら返したのかが分からないと判断できません。貸金業法19条の2に請求権があります。
債務者等又は債務者等であつた者その他内閣府令で定める者は、貸金業者に対し、内閣府令で定めるところにより、前条の帳簿(利害関係がある部分に限る。)の閲覧又は謄写を請求することができる。この場合において、貸金業者は、当該請求が当該請求を行つた者の権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかであるときを除き、当該請求を拒むことができない。
条文はこの後に「当該請求が当該請求を行つた者の権利の行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかであるときを除き、当該請求を拒むことができない」と続きます。原則として拒めない、という作りです。
「債務者等であつた者」も入っているので、完済したあとでも請求できます。過払い金があるかどうかは、この履歴を引き直して計算します。仕組みは過払い金はなぜ発生したのかにまとめました。
完済したら証書を返してもらう
払い終えたときの義務も置かれています。16条です。
債権回収会社は、特定金銭債権の全部の弁済を受けた場合において当該特定金銭債権の証書を有するときは、遅滞なく、これをその弁済をした者に返還しなければならない。
貸金業法22条にも同じ規定があります。払い終えた証拠を残すために、返してもらうところまでが手続きです。
受任通知を出せば取立ては止まる
自分で対応を続けるのが難しい場合、専門家に依頼すると受任通知が出ます。通知が届いたあとは、正当な理由なく直接請求することが禁じられます。これは譲り受けた会社にも準用されます。
依頼先には線があります。司法書士が代理できるのは1件140万円までで、しかも認定を受けた司法書士に限られます。このサイトが紹介しているアース司法書士事務所は、法務大臣の認定を受けた認定司法書士の事務所です。金額が上限を超える場合は弁護士に頼むことになります。シン・イストワール法律事務所のような法律事務所であれば、金額の線がありません。
依頼した時点で、電話も郵便も窓口が移ります。自分で名乗らせたり時効を数えたりする必要がなくなるので、やり取りが続いてしんどい場合は、早めに切り替えるほうが負担が減ります。
一括請求と分割の提案を分けて考える
債権回収会社からの連絡では、一括での支払いを求められることと、分割の提案を持ちかけられることの両方があります。
分割の提案は一見やさしく見えますが、応じると分割の合意が成立します。合意は債務の承認にあたるので、時効の主張はそこで使えなくなります。
条文の側から言えるのはここまでで、どちらを選ぶべきかは金額と時期で変わります。自己破産や個人再生を選んだ場合にどうなるかは債務整理には3つの手続きがあるにまとめました。
手順にすると
- 請求書に書かれた商号と、許可を受けた会社かどうかを確かめる
- 電話が来たら商号と担当者名を名乗ってもらう(17条2項)
- その場で払わない。金額も認めない
- 最後に返済した日を思い出す。分からなければ取引履歴を請求する
- 時効が完成していそうなら、専門家か公的な窓口に相談する
3が要になります。電話口で「少しだけなら払える」と言うことも避けてください。
相談先は法テラス(日本司法支援センター)、各地の弁護士会・司法書士会、消費者ホットライン188があります。準備するものは相談の前に用意しておくものにまとめました。
まとめ
- 債権回収会社は法務大臣の許可を受けた株式会社に限られる(3条)
- 許可には資本金5億円以上という条件がある(5条1号)
- 相手方が求めれば商号と氏名を明らかにする義務がある(17条2項)
- 威迫や平穏を害する言動は禁じられている(17条1項)
- 取引履歴は原則として拒めない請求権になっている(貸金業法19条の2)
- その場で一部でも払うと、時効の主張ができなくなることがある