自己破産が家族に及ぶ範囲は、条文で限られている
自己破産で調べられている言葉に「デメリット」があります。一緒に出てくるのは、家族、子供、親、賃貸といった語です。つまり気にされているのは手続きそのものではなく、どこまで影響が及ぶかのほうです。
範囲は条文に書かれています。4つに分けて見ていきます。賃貸については審査する相手が大家ではないので、債務整理のあとの賃貸は、審査するのが大家ではないで別に扱います。
まず、免責で何が消えるか
破産法第253条第1項がこう定めています。
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
責任を免れる、と書かれています。ここが手続きの目的にあたる部分です。ただし書きが付いていて、免れないものが7種類あります。これは後で見ます。
家族に及ぶのは、保証人になっている場合
いちばん心配されるところですが、条文は範囲をはっきり書いています。破産法253条2項です。
免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
読む向きに注意が要ります。これは「家族に請求が行く」という条文ではありません。免責の効果が及ばない相手を挙げた条文です。挙がっているのは3つです。
- 保証人
- 破産者と一緒に債務を負担している人(連帯債務者)
- 破産者以外の人が担保を出している場合の、その担保
裏を返すと、この3つに当たらない家族には、この条文から何も生じません。親が保証人になっていない借金について、親に請求が行く根拠にはならない、ということです。
逆に、家族が保証人になっている借金は残ります。免責を受けた本人ではなく、保証人が請求される形になります。 手続きに入る前に確かめるのはここです。
子供の進学や就職について、破産法に制限を定めた条文はありません。資格の制限は次に見るとおり、破産した本人にかかるものとして書かれています。
自由財産|手元に残る現金の額は政令で決まっている
「財産が全部無くなる」と思われがちですが、範囲は決まっています。破産法34条3項1号が、破産財団に属しない財産をこう書いています。この破産財団に属しない財産のことを、実務では自由財産と呼びます。条文には出てこない言い方ですが、申立ての書式や裁判所の説明では広く使われています。
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
金額そのものは書かれていません。民事執行法施行令1条を見ると出てきます。
民事執行法(以下「法」という。)第百三十一条第三号(法第百九十二条において準用する場合を含む。)の政令で定める額は、六十六万円とする。
66万円に2分の3を掛けるので、99万円です。この額の現金は破産財団に入りません。
同項2号は、差し押さえることができない財産も破産財団に属しないとしています。給料の差押えに上限があるのと同じ考え方で、そちらは給料の差押えは4分の3が禁止で、上限が政令にあるにまとめました。
額が固定されているわけではなく、下限が決まっている形です。次に見るとおり、広げるための手続きが別に用意されています。
自由財産の拡張|99万円で足りないときは範囲を広げる申立てができる
実務で自由財産の拡張と呼ばれる手続きで、根拠は破産法34条4項です。裁判所は、破産手続開始の決定があった時からその決定が確定した日以後1か月を経過する日までの間に、破産者の申立てによって、または職権で、破産財団に属しない財産の範囲を広げる決定ができます。
考える材料も条文に並んでいます。破産者の生活の状況、開始の時に持っていた3項各号の財産の種類と額、収入を得る見込み、その他の事情です。生活の実情を見て個別に決める仕組みになっているということです。
同条5項は、この決定をするにあたって破産管財人の意見を聴かなければならない、としています。手続きの相手は裁判所ですが、管財人の見方も入ります。
断られた場合についても書かれています。34条6項です。
第四項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
期間の制限があるので、生活に必要な財産があるなら、依頼する段階で伝えておくことになります。何を伝えるかは相談の前に集めておく書類と重なります。
就けない職業があるが、終わる日も条文にある
資格の制限は、破産法ではなくそれぞれの業法に書かれています。警備業法14条1項がその例です。
十八歳未満の者又は第三条第一号から第七号までのいずれかに該当する者は、警備員となつてはならない。
同法3条1号がこれです。
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
「復権を得ない者」と限定されています。復権すれば外れる、という書き方です。その復権は破産法255条1項にあります。
破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。一免責許可の決定が確定したとき。
1号の免責許可は、返済の義務が無くなる決定のことです。つまり免責が確定すれば復権し、資格の制限は外れます。
効果の及び方も同条2項に書かれています。
前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
破産手続開始の決定から
- 資格の制限がかかる
免責許可の決定が確定してから
- 資格の制限が外れる(255条1項1号)
違うのは復権しているかどうか。制限は手続きの間に限られる
制限がかかるのは手続きの間だけで、期限の無い制限ではありません。
免責されない借金が7種類ある
253条1項のただし書きに並んでいます。よく問題になるのは次です。
- 租税等の請求権(1号)。税金や社会保険料
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)
- 故意または重大な過失で人の生命または身体を害した場合の損害賠償請求権(3号)
- 養育費や扶養にあたるもの(4号)
- 雇っていた人の給料と預り金(5号)
- 知りながら債権者名簿に書かなかった請求権(6号)
- 罰金等の請求権(7号)
4号ニがこう書いています。
民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
養育費は自己破産をしても消えません。 同号ハには子の監護に関する義務も挙がっています。このあたりは手続きを選ぶ前に確かめておく必要があります。
6号にも注意が要ります。債権者を書き漏らすと、その分だけ免責されません。相談の前に集めておく書類で借入先を一覧にしておくのは、この条文があるためです。
慰謝料は2号と3号を見る
7種類のうち、慰謝料が入るかどうかは2号の「悪意」と3号の「人の生命又は身体」で分かれます。読み方は慰謝料が自己破産で消えるかは、条文の2号と3号で分かれるにまとめました。
残るものと、別の記事に分けたもの
官報への掲載と信用情報は、どちらも条文や公表資料の話になるので別にしました。
- 官報に載る手続きと載らない手続き → 官報に載るのはどの手続きか
- 信用情報に記録が残る期間 → 債務整理のブラックリストはいつまで残るか
手元に残る財産のうち車の扱いは自己破産で車がどうなるかは、名義と価値で分かれるに分けました。
自己破産そのものの条件は自己破産の条件は金額では決まらない、誰に頼めるかは司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにあります。
判断に迷うときは、法テラス(日本司法支援センター)や各地の弁護士会・司法書士会の相談窓口も利用できます。消費者ホットラインは 188 です。
手続き中の引っ越しについては自己破産の手続き中の引っ越しにまとめました。
保証人がいるなら、先に伝える
253条2項で影響が及ぶのは保証人と連帯債務者です。誰が保証人になっているかは、契約書を見れば分かります。手続きに入る前に確かめておく話です。
頼める相手は金額で分かれます。司法書士が任意整理で代理できるのは1社あたり140万円までで、認定を受けた司法書士に限られます。自己破産で司法書士が行うのは書類の作成です。大阪のアース司法書士事務所は、事務所紹介のページに代表者の認定番号(第612074号)と大阪司法書士会の登録番号を載せているので、番号から確かめられます。
代理してもらう側を選ぶなら弁護士になります。シン・イストワール法律事務所は公式サイトに代表弁護士の登録番号60436を載せていて、こちらも番号から確かめられます(2026年9月1日確認)。
家族への影響を心配している段階では、誰が窓口に立つかで動き方が変わります。代理人が付けば、債権者からの連絡は事務所へ向きます。