借金の公正証書があると裁判を経ずに差し押さえられる
借入のときに公正証書を作ることがあります。これが入っていると、返済が滞ったときの流れが変わります。
判決を取らなくても差し押さえができる
差し押さえをするには債務名義が要ります。民事執行法22条が種類を並べていて、その5号が公正証書です。
五金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載され、又は記録されているもの(以下「執行証書」という。)
条件は2つです。金銭の一定の額の支払を目的とすることと、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が入っていること。
1号から4号までは判決や支払督促で、裁判所の手続きを経たものです。5号だけが、裁判所を通さずに作られたものになっています。
つまり執行証書があると、訴えを起こさずに給与や口座を差し押さえる手続きに進めます。差し押さえの範囲と上限は給料の差し押さえには上限があるにまとめました。
「直ちに強制執行に服する」の一文が分かれ目
公正証書であれば全部が執行証書になるわけではありません。条文が求めているのは、その陳述が記載または記録されていることです。
手元にある書面を見るなら、そこを探します。金銭消費貸借契約公正証書という表題でも、この一文が無ければ22条5号には当たりません。
逆に言えば、この一文があるかどうかで、相手が取れる手段が変わります。
貸金業者は代理人の選任に関与できない
公正証書は本人が公証役場へ行かなくても、代理人に委任して作れます。そこに貸金業法20条の制限がかかっています。1項です。
貸金業を営む者は、貸付けの契約について、債務者等から、当該債務者等が特定公正証書(債務者等が貸付けの契約に基づく債務の不履行の場合に直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載され、又は記録された公正証書をいう。以下この条において同じ。)の作成を公証人に嘱託することを代理人に委任することを証する書面又は電磁的記録を取得してはならない。
委任状を受け取ること自体が禁じられています。2項はさらに踏み込んでいます。
貸金業を営む者は、貸付けの契約について、債務者等が特定公正証書の作成を公証人に嘱託することを代理人に委任する場合には、当該代理人の選任に関し推薦その他これに類する関与をしてはならない。
「こちらで代理人を用意します」と言われたら、この項に当たります。推薦も「これに類する関与」も並べて禁じられています。
貸金業者が誰かを確かめる方法は総量規制は誰にかかっているのかにまとめました。貸金業者でない相手には、この条文が及びません。
作る前に書面で説明する義務がある
20条3項は、嘱託する場合にあらかじめ書面を交付して説明することを求めています。説明する事項の1号がこれです。
一当該貸付けの契約に基づく債務の不履行の場合には、特定公正証書により、債務者等が直ちに強制執行に服することとなる旨
何が起きるかを先に説明する、という作りです。説明を受けた覚えが無いまま作られている場合、そこが 材料になります。
2号では、債務者等の法律上の利益に与える影響に関する事項が挙げられています。
作ったあとにできること
執行証書があっても、債務そのものが特別になるわけではありません。債務整理の対象になる点は他の借入と同じです。
自己破産で、返済の義務が無くなる免責許可が出れば、執行証書に基づく請求も対象になります。個人再生でも再生計画の対象に入ります。手続きごとの違いは債務整理には3つの手続きがあるにまとめました。
先に差し押さえが始まっている場合は、手続きの中で止まることがあります。その扱いは手続きの種類と時期によって変わるので、弁護士か、法務大臣の認定を受けた認定司法書士に早めに相談してください。
依頼できる相手の線は司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるに、費用は債務整理の費用は4つに分かれるにまとめました。
誰に頼めるかは金額で決まる
執行証書があるかどうかにかかわらず、依頼できる相手には線があります。司法書士が任意整理を代理できるのは1件140万円までで、認定を受けた司法書士に限られます。このサイトが紹介しているアース司法書士事務所は認定司法書士の事務所です。
1社あたりが140万円を超える場合は弁護士に頼むことになります。自己破産と個人再生では、司法書士が行うのは裁判所へ出す書類の作成で、代理ではありません。債務整理を扱う法律事務所としてはシン・イストワール法律事務所があり、こちらは金額の線を超える場合や、裁判所での代理まで必要な場合の相手になります。
差し押さえが始まっているかどうかで、急ぎ方が変わります。給与を差し押さえられている場合は、毎月の手取りがその分減り続けます。
時効との関係も変わる
執行証書は債務名義なので、それに基づいて強制執行が始まると時効の進み方に影響します。逆に、長く動きが無ければ時効が完成していることもあります。
数え方は借金の時効は何年で完成するかにまとめました。古い執行証書について請求が来た場合、まず日付を確かめてください。その場で一部でも払うと、承認にあたって時効を主張できなくなることがあります。
債権が別の会社へ譲渡されている場合の扱いは債権回収会社から請求が来たときにまとめました。
手元の書類を確かめる順番
- 表題に「公正証書」とあるか
- 「直ちに強制執行に服する」の一文があるか
- 作成時に書面で説明を受けた記憶があるか
- 代理人を立てた場合、その人を誰が選んだか
3と4は20条に関わります。貸金業者が選んだ代理人だった場合、そこが問題になります。
公正証書が手元に無い場合、公証役場で正本や謄本を請求できます。作成した公証役場が分からないときは、契約書や当時の書類を探すことになります。
まとめ
- 「直ちに強制執行に服する」と書かれた公正証書は債務名義になる(民事執行法22条5号)
- 判決を取らずに差し押さえの手続きへ進める
- 公正証書であれば全部が該当するわけではない。その一文があるかどうかで分かれる
- 貸金業者は委任状を受け取れず、代理人の選任に関与もできない(貸金業法20条1項・2項)
- 作る前に、強制執行に服することとなる旨を書面で説明する義務がある(同3項)
- 執行証書があっても、債務整理の対象になる点は他の借入と同じ